“ものづくり”へのこだわり
ユニークなインターネット企業として注目されている企業。”ものづくり”にこだわり、次世代のウェブメディア、ウェブサービスの開 発に力を注ぐ。今期、東京から創業の地である京都に移転し、更なる発展を目指す。

中目黒駅から徒歩6分ほど、山手通り沿いにあるキレイなオフィスの最上階に、今回取材にお伺いしたはてな様がご入居されています。元々はオーナーの住居だった区画だそうです。目黒川が隣に流れ、駐輪場がある物件は都会ではありながら、どこかゆったりとした雰囲気をかもし出しております。
東京から京都へ
移転の経緯を教えてください。
弊社は、元々2001年に京都で設立し、業務拡大のため、2004年に東京に進出してきました。また、世界展開を前提に考えていたので、2006年にアメリカのシリコンバレーに子会社を設立しました。次のステップをそろそろ考えなきゃいけないという時期にさしかかり、京都に本社を移転し、東京支店も移転をしました。 外部の方には突然のことで驚かれたのでずが、代表の近藤は自著でもいつか京都に本社を戻すと言っていました。東京に進出したのは、会社としてのはてなを成長させるには、インターネット企業が日本で一番集積している場所にオフィスを構えた方がより大きな成長が望めるだろう、という理由からでした。 2004年に東京に進出して、スタッフも集まり、ビジネスもうまく周り始めて、小さな会社ですが、それなりに知ってくださる方も増えて、アメリカ進出も果たせました。ただ、以前は倍々ゲームで成長していたインターネット産業の成長率が鈍化しており、画期的なサービスが生まれづらくなっています。数年前まではブログやSNS、動画など、世界的に流行する新機軸のサービスが生まれていたのですが、最近はそういうのがあまりなくなっていると思っています。 はてなは元々ユニークな物作りをしようと思っている会社なんですね。ユニークな物をつくるには、自分の頭の中で無から有を生み出すような仕事をしなければなりません。ただ、そのような取り組みをするには、東京は少し雑音が多すぎると思うようになりました。 東京にはいい面も沢山あります。人が多く集まっているので、どの分野の専門家でも見つかりますし、企業の数も圧倒的に多く、ビジネスチャンスも資金も集まっていると思います。ただその分、情報が溢れすぎていて、本当にユニークなものをつくるには、周りの影響を受けすぎてしまう。本当にユニークな、誰も想像したことが無いようなものをつくるためには、世間の雑音から少し距離を置いたほうがいいというのが、京都に移転した大きな理由の一つです。 京都には人まねをしていない会社や人がたくさんいます。任天堂さんや京セラさんなど、ユニークなものづくりで世界的に成功している会社が京都には多いと思います。 弊社が京都に戻ると発表した際に、「撤退なのですか?」と聞かれることが多かったのですが、全くそのつもりはなく、次の事業戦略を検討したうえで、本当にいいものづくりを出来る環境を整えたいと思った結果、京都に戻ろうと決断した次第です。それが去年の11月のことです。
東京支店を残された理由は何ですか。
一企業として事業を継続して行くためにはビジネス面もしっかり回す必要があります。そのためには日本のビジネスの中心地である東京にオフィスを残すのは自然な判断だと考えました。弊社の収益の大部分は広告売上なのですが、広告主様、パートナー企業様は東京に集中しています。また、東京は一番人口の集まっている都市なので、優秀な人材を採用するという観点からもオフィスを構えるメリットは大きいと思います。弊社で働きたいと思ってくださった優秀な方がいても、何らかの理由で京都に行けないという場合もありますので。 基本的には、開発チームは京都本社に集中させていますが、東京にも何名かエンジニアがいるので、会社が発展していくなかで、将来的に東京に第2開発チームのようなものができていく可能性もあると思っています。
今回のオフィス選びの基準はなんでしたか。
色々とありました(笑)。その中でも重要なポイントだったのが、自転車置き場があるということ。このオフィスには10台くらい置けるスペースがあるんです。代表の近藤が自転車部だったということもあり、自転車通勤を推奨しています。エコにもいいですし、健康にもいいですし。自転車推奨企業としては、路上駐輪をするわけにもいかないので、駐輪場は必須でした(笑)。 また、データセンターから近いというのがもう一つの重要なポイントでした。データセンターから1時間や2時間もかかる場所だと、障害が起きたときに困りますので、車ですぐにいけるような場所にオフィスを構える必要がありました。 あとは、当時移転を検討していた頃が、非常に賃料が高い時期でして、渋谷、恵比寿は坪単価が3万円するような時期でした。以前の代官山のオフィスは、随分安くして頂いていたのですが、今回のオフィスの方が安いですね。 前回代官山オフィスはNTTの研究施設を間借りしてました。バスケットコートがあったり、テニスコートがあったり、緑もあったりと、凄く環境がよかったです。お客様に「大学の研究室のようですね」と言われる独特な環境だったと思います。「はてならしいオフィス」を考えたときに、渋谷の道玄坂の雑居ビルに入居しているというイメージはわかなかったです。 本当に色々と探す中で、コレはいけると思ったのが何棟かありました。一つは、電気容量がすごい大量にある下落合のビル。そのときはデータセンターを自社で作ろうとしていまして(笑)「電気容量が1000A以上あり、かつ安いところ。東京都内」というめちゃくちゃなな条件だったんですが、東京オフィスコンサルティングさんの橘さんはきちんと見つけてきてくださいました。後は、条件交渉まで進んだ祐天寺にある物件。「おしゃれな巨大倉庫」という珍しい物件で、環境も静かで結構気に入っていたんです。ただ、ちょうど申込書を書いた翌日くらいに、突如「京都に行く!」と……なってしまいまして。(笑) このオフィスは、京都の方のオフィスも探さなくてはいけない状況で、東京のスタッフに任せて探してもらいました。渋谷にも近いし、目黒川の隣だし、環境も落ち着いていて眺望も良いということで、決定しました。交通の便も良いです。 京都のオフィス探しに関しては、近藤が場所を指定していたので、そこのエリアの物件を全部見て決めました。京都のオフィスに関しては、宇垣さん(弊社代表)からいくつか信頼できそうな大手の仲介会社を紹介してもらって物件を決めました。契約が決まったのを報告したら、宇垣さんはとても残念がられていて(笑)。そこで、決意されていましたね。全国の物件をカバーすると(笑)。
京都と東京で別れているデメリットとメリットを教えて下さい。
デメリットは物理的に距離の壁があるので、コミュニケーションがしづらい面ですね。ですので、テレビ会議のシステムを導入しました。こちらは常に、京都と東京をつなげている状況です。メールよりも話した方が伝わるし、顔を見ながら話した方がより伝わると思っています。テレビ会議で面接をする場合もあります(笑)。 コミュニケーションの風通しがよいという文化を維持するのにエネルギーが必要というところがデメリットですね。 メリットは、増床のおかげで採用が活発になってきたこと。オフィスがガランとしていると「使わなきゃもったいない!」って思うじゃないですか。おかげで以前より採用活動が活発になり、スタッフも順調に増加しています。また、ものを作っている人とそれ以外の人との距離が適度にとれるのもメリットだと感じています。弊社はものづくりの会社なので「面白いサービス考えようぜ!」と、開発陣がワイワイガヤガヤやっている横で、営業が「売上目標まで○○万円足りないぞ!」とか言っているのが聞こえたら萎えるじゃないですか(笑)。ものづくりは、仕込みの期間が長いので、成果が出るときと成果が出ないときのパフォーマンスの振れ幅が大きいと思っています。逆に総務とかサポートとかは安定したパフォーマンスを出し続けないといけない。 以前は全員1つの部屋で仕事をすることにこだわっていた時期もありますが、仕事のリズムが違う人たちは距離を置いた方が逆に心地良いのではないか、と思うようになりました。
人材は積極的に採用されているのですか。
積極的に採用しています。京都は大学が多い学生の街です。街は変わらないのですが、絶えず学生は入れ替わっているので、一般的な地方都市とは違うなという印象です。当初は京都に拠点を移すと、採用の面が心配だったのですが、インターンシップを積極的に活用するなど、うまくいっていると思います。 京都はインターネット事業を行っている会社が東京よりも少なく、名前が知れている企業は更に少ないんですね。一方で、京都に来た学生さんで、京都が好きで離れたくないと思っている学生さんも多い。なので、思いのほか採用の面はうまくいっていると思います。
輿水さんはどのように、はてなさんに参画されたのですか。
前職は大手ポータルサイトを運営する企業にいました。私が社会人になった当時は、ネットバブルの最盛期でして、「1ユーザ=100円の価値がある」と言われてるような世界でした(笑)。大学卒業後、IT系のベンチャー企業に入社し、その会社が前職の大手ポータルサイトに買収されたので、そちらに在籍しておりました。そちらの会社で、ディレクターやプロデューサーとして仕事を行っていたのですが、2005年の夏くらいに、会社での自分に限界を感じる時期がありました。大きな仕事ができるという楽しい部分はあったのですが、会社が大きくなるにつれて、社内の業務フローが複雑になりすぎていると感じていました。社会的に与える影響が大きい仕事をしているのでしょうがないとは思うのですが、とりあえず面白いサービスを考えたので、「明日リリースしてみよう!」などとはいかないんですね。しっかりと企画書にを作って、セキュリティー的な問題などを確認して、動作検証して…とやっていると、小さなサービスでもリリースまで1ヶ月以上かかってしまう。 ウェブサービスってもっとスピーディーに作らないとな、と思っていた部分もあり、もう一度若いベンチャー企業に参加したいと思っていたところに出会ったのが、はてなでした。その後、2006年2月に入社しました。
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| ビル最上階のオフィスで、周辺に高い建物がないので、眺望はとても良いです。会議机はよくよく見ると卓球台になっており、時には卓球を行うとか(笑)。会議机の奥にあるのはテレビ会議システムです。京都オフィスと常時接続されています。 | ||
自分達の頭で考えて”モノ”をつくる。
優秀な方が集まる秘訣は何ですか。
各個人による部分が多いとは思いますが、私自身の例でいうと、「今後どう成長するか予測不能だから入社した」という感じです。 前職にいた2005年当時は、前ほどPVやユーザ数が伸びなくなってきていました。常時接続、ブロードバンドが普及して、殆どの人がネットには触れていて、家庭からインターネットを使用するのが当たり前になり、これから何をしていけばいいのだろうという雰囲気がありました。それ以前は、とりあえず何か新しいサービスを立上げれば取りあえずユーザを確保でき、ビジネスも周っていたのが、とりあえずサービスを立ち上げるというだけではダメな時代になっており、どうしたらいいのかと。 個人的には、そういう時代こそ、身動きの軽いベンチャー企業の方が新しい可能性が見つかるのではと思っていました。その頃、凄い元気そうだな、と目に止まったのがはてなでした。エンジニアがしっかりと揃っているのも魅力的でした。 あとは、自身でサービスの企画をしていて、技術が分かる人が企画しないと本当に世の中を変えるようなものはつくれないんじゃないかと思っていたこともあって。実際、Yahoo!もGoogleもFacebookも技術が分かる人が立ち上げたサービスですし。 私はエンジニアでは無いので、今後自分がどうして行くかと考えた時に、技術力がある人達と一緒に仕事をしてみて、私はそれ以外の部分で会社を支えていけたらいいと思いました。 あとは、はてなは「儲かればなんでもいい」とは全く思わない会社なので(笑)。継続的にサービスを提供するためにはお金も必要なのでビジネスのことも考えてはいますが、「こういうサービスをつくったら世の中の人達が喜んでくれるよね」とか、「新しい価値を提供したい」など、あくまでサービス主体で全ての物事を考えています。そういう部分が共感をもたれるのではないかと思います。
御社の事業展開の中での、オフィスの位置付けを教えて下さい。
オフィスは、家より滞在する時間が長い重要な場所だと思っています。そこでエネルギーが生まれてくるか?が非常に大事なことだと思っています。やはり、暗くてじめじめしたところだったりするとやる気が出ませんし。今回のオフィスに決定するまで凄く大変でした。100件以上物件を見たあげく、「やっぱり京都に行く!」とか、東京オフィスコンサルティングの皆さんには、色々とご迷惑をお掛けしてすみませんでした。 このオフィスは、全面に窓があり凄く明るい造りになっています。元々はオーナーさんの住居だったようで、普通のオフィスとは少し雰囲気が違いますし。弊社のようなソフトウェアをつくる会社は、人が一番の資産なので、今後もそのスタッフが最大のパフォーマンスを発揮できる環境をつくっていきたいと思っています。
今後の事業展開を教えて下さい。
コンシューマー向けのサービスを作り続けるということは変わりません。この一年は、京都に拠点を移すという事で、社内の力を内向きに割いていたのですが、そろそろ外に力を向けていこうと考えています。最近、国内で面白いウェブサービスが出てきていないと思っています。その停滞感を吹き飛ばせるようなサービス、パソコンやモバイルなどデバイスに関係なくサービスを開発していけたら良いなと思います。第1弾として、今秋はてなブックマークを大幅にリニューアルをする予定です。 アメリカでの事業は、一旦休止しています。名刺代わりになるサービスを作ってからでないとしょうがないと思っているので。これからはてなが作るサービスは、原則として日本語と英語の両方を作っていく予定です。
東京オフィスについて一言お願い致します。
ウノウの山田さんの紹介でお付き合いをさせて頂いたのですが、インターネット業界の評判は抜群に良いですね(笑)。サイトもとてもよく出来ていると思っています。どの業者さんにお願いしようかなと思っている段階で、弊社はウェブの会社なんでウェブを見てしまうんですよね。ウェブのツールが良くできているなというのが、社内でも評判が良かったです。1年半も付き合ってもらいありがとうございました。絶対採算とれてないだろうなと(笑)。次はもう少し大きな場所に移転できるようにがんばります!
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| 10名程のスタッフの方がワイワイと作業を行っていました。執務スペースにもウェブカメがあります。京都の執務スペースも十分に見渡せます。 | ||
取材を終えて
こちらのコラムは東京オフィスの岩上が担当いたします。
はてなユーザの一人として、今回のはてな様へのインタビューはとても楽しみにしておりました。ネット上の著名人が集まる会社ということで、少し緊張しながらのインタビューに優しくお答え頂きありがとうございました(笑)。京都への本社移転や、”ものづくり”へのこだわりなど、とても興味深かったです。特に、本質的なユニークなサービスを造ろうとする際に、東京では雑音が多すぎるというお話は、妙に納得してしまいました。これから自社サービスに力を入れていくということで、1ユーザとして、とても楽しみにしています。取材にご協力頂きありがとうございました。
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移転事例紹介
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